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y-kamae1

冬のスイカ

子どもが熱を出した。



検査の結果、幸いコロナでもインフルエンザでもなかった。

医者の話では、2~3日安静にすれば大丈夫でしょう、という事だった。


病院から息子を連れて帰り、ベッドに寝かせて何か欲しいものはあるかと訪ねた。

子どもが風邪を引くと必ず聞いているが、その度に私は祖母を思い出す。



それは私がまだ小学校に上がる前のことだった。



風邪を引いた私の看病に祖母が来てくれていた。

何か食べたいものはある?と聞かれ、私は祖母に答えた。


「スイカが食べたい」


わかった、と祖母は買い物に出かけたが、季節は冬真っ只中。

スイカなどどこにもあるはずがない。



寒空の中、方々探し回ったのだろう。

しばらくして帰ってきた祖母は申し訳なさそうに「ごめんね」と謝った。



子どもは時に残酷である。

そんな祖母に対して私は「おばあちゃんの嘘つき!」と言ってしまった。


ごめんね、ともう一度祖母はつぶやいた。



子どもの寝顔を見ながら、いつもその事を思い出す。

思い出はせめてもの慰め、いつまでも祖母は心にいる。


もし、もう一度祖母に会えるなら一言だけ伝えたい。


おばあちゃん、ありがとう。




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