子どもが熱を出した。
検査の結果、幸いコロナでもインフルエンザでもなかった。
医者の話では、2~3日安静にすれば大丈夫でしょう、という事だった。
病院から息子を連れて帰り、ベッドに寝かせて何か欲しいものはあるかと訪ねた。
子どもが風邪を引くと必ず聞いているが、その度に私は祖母を思い出す。
それは私がまだ小学校に上がる前のことだった。
風邪を引いた私の看病に祖母が来てくれていた。
何か食べたいものはある?と聞かれ、私は祖母に答えた。
「スイカが食べたい」
わかった、と祖母は買い物に出かけたが、季節は冬真っ只中。
スイカなどどこにもあるはずがない。
寒空の中、方々探し回ったのだろう。
しばらくして帰ってきた祖母は申し訳なさそうに「ごめんね」と謝った。
子どもは時に残酷である。
そんな祖母に対して私は「おばあちゃんの嘘つき!」と言ってしまった。
ごめんね、ともう一度祖母はつぶやいた。
子どもの寝顔を見ながら、いつもその事を思い出す。
思い出はせめてもの慰め、いつまでも祖母は心にいる。
もし、もう一度祖母に会えるなら一言だけ伝えたい。
おばあちゃん、ありがとう。
Comments